崩壊に向かうEU 田中宇記事◆ )槓

  • 2017.02.27 Monday
  • 07:52

 

 

▼メルケルまでがユーロの崩壊傾向を認めた

 

 

ドイツのメルケル首相は2月18日の記者会見で、ユーロを作らずドイツマルクのままの方が良かったと示唆する発言を初めて放った。

 

米国トランプ政権が、ドイツはユーロのドル為替を安すぎる状態にしていると批判していることへのコメントを尋ねられたメルケルは「ユーロの為替政策は(ドイツなど加盟国より上位にいるEUの中央銀行)ECBが決めている。

 

ECBは(経済が強い)ドイツでなく(弱い)南欧諸国のためにユーロ安をやっている。ドイツ(の強さ)から見てユーロが安すぎるし、それでドイツが(輸出増など)得してきたことは事実だが、決定権はECBにあり、独政府にはどうにもできない。

 

ユーロを作らずマルクのままだったら、為替はもっと高かったはずだ」という趣旨を述べた。

 

 

 

 EUの指導者にとって、ユーロ以前の自国通貨の名前を口にすることは、EU統合の目標に水をさすのでタブーだった。

 

 

メルケルがドイツマルクの名称を出したことは、EUの事実上の最高指導者であるメルケル自身が、ユーロが崩壊しそうだと認めたことを意味している。

 

 

ドイツ連銀は、第二次大戦の戦勝国である米英仏に保管してあった金地金の半分を、2020年までに本国に戻す計画だったのを、前倒しして今年中に回収することにした。これも、ユーロ崩壊に備えた動きに見える。

 

 

 

 今春の仏大統領選に向けた世論調査で、ユーロ離脱を約束しているルペンが優勢になるたびに、仏国債が忌避されて金利が上がり、独仏間の国債金利差が12年のユーロ危機以来の0・8%ポイントに拡大している。

 

 

メルケルら独政府は、極右ルペンのライバルである中道右派のフィヨン候補を応援していたが、フィヨンはタイミングよく起こされた金銭スキャンダルで人気が落ちている。

 

 

 ユーロ圏の災いはルペンだけでない。ギリシャの財政金融危機も再燃している。

 

従来、いやいやながらもギリシャに救援金を出していたドイツは今回、以前より厳しい態度をとり、ギリシャがユーロから自主的に離脱しない限り救援金を出さないと言っている。

 

 

ドイツやEU中枢は以前、ユーロから離脱する国を絶対に出さない(ユーロ圏の縮小を許容しない)姿勢をとっていた。

 

だが昨夏の英国EU離脱の決定以来、どんどんタガが外れ、最近のドイツはむしろユーロ圏の縮小(解体)再編を望んでいるようだ。

 

 

IMFは、ドイツが出さないならIMFもギリシャ支援に協力しないと言っている。

 

 

 

 危機が放置されてギリシャや南欧諸国、フランスなどがユーロを離脱し、それを機にユーロ解体が進む可能性がある。トランプ政権は、ユーロの存続を危ぶんでいる。

 

EUはこれまで、統合の方向だけに注力し、再編や解体についての考え方や手続きを議論していない。EUの憲法であるリスボン条約にも、ほとんど記述がない(だから英離脱が大騒動になった)。

 

解体した後うまく再編できるのか、何年混乱するのか、予測不能な事態になっている。

 

 

 

 ユーロの崩壊は、ECBがドル支援策であるQEを続けられなくなることを通じて、米国など世界金融の危機につながる。

 

 

今の金融システムは、株高など安定しているように見えるが、これはECBと日銀が巨額のQEを続け、資金を注入しているからだ。

 

QEという麻薬が切れると、金融システムは金利が上昇して危険になる。

 

 

トランプのインフラ投資策など実体経済のテコ入れ策の効果はせいぜい数兆ドルで、数百兆ドルの金融システムよりずっと規模が小さく、金融危機を抑止できない。

 

 

 

▼EUのナショナリズム超越式でなく、トランプのナショナリズム扇動式で多極化が進むことになり、EUが壊れる

 

 

 私はこれまで、EUやユーロを失敗しにくいものと考えてきた。

 

 

きたるべき多極型の世界において、欧州が独仏伊西といったばらばらな中規模の国民国家のままであるよりも、EUという巨大な超国家的な国家組織になった方が、世界の安定に役立つからだ。

 

 

EU(欧州統合)を欧州人に押しつけたのは、軍産複合体(米単独覇権主義者たち)の裏をかいて冷戦を終わらせた(隠れ)多極主義のレーガン政権だった。

 

 

だが、EUの主導役となったドイツは、欧州統合を進めながらも、対米従属を続け、軍産複合体の言いなりになる状態を続けた。

 

 

統合はなかなか進まなくなり、ギリシャなど南欧の金融財政危機や、難民危機に見舞われ、EUの弱体化が進んだ。

 

 

 EUは、ナショナリズムを全く使わずに国家統合を進めてきた。

 

 

欧州人のアイデンティティは、国家統合が進んでもフランス人やドイツ人のままで「欧州人」のナショナリズムを扇動する動きがほとんどない。これは意図的な戦略だろう。

 

EU(欧州統合)は、人類にとって最大の紛争の元凶となってきたナショナリズムを超越・止揚する政治運動だ。だが、このEUの反ナショナリズム運動は、昨夏の英国のEU離脱、昨秋の米国のトランプ当選、前後して激化した難民危機による欧州人の反イスラム感情の台頭を機に、欧州各国でのナショナリズムの勃興となり、各国のナショナリズムが、EUの反ナショナリズムを凌駕し破壊する動きになっている。

 

 

 

 今回の欧米全体でのナショナリズムの勃興は、米国でトランプ革命を引き起こしており、トランプは米国覇権の放棄による多極化を進めている。

 

 

EUのナショナリズム超越による国家統合が成功していたら、アフリカや中南米でもEU型の国家統合が進み、それによって世界の多極化が進展する可能性があった。だが、このシナリオは、トランプが進めるナショナリズムによる、逆方向からの多極化によって打ち負かされている。

 

EUのシナリオでなく、トランプのシナリオに沿って多極化が進もうとしている。この流れの中で「古いバージョンのシステム」になったEUが解体に向かっている。

 

 

 EUの中心は独仏の統合だ。

 

フランスがルペン政権になり、ドイツとの国家統合を解消した場合、EUはおそらく完全に崩壊する。

 

ルペンでなくフィヨンやマクロンといった左右どちらかの中道候補が政権をとると、独仏の統合つまりEUの根幹はたぶん維持される。

 

だが、欧州諸国でナショナリズムが強い限り、それを乗り越えて再びナショナリズムの止揚をめざす欧州統合の政治運動が勃興するのは困難だ。

 

 

南欧と東欧をいったん切り離し(それもどうやってやるのか不明だが)、独仏とベネルクス、北欧ぐらいで小さくまとまって再起するなら国民の抵抗が少ないか。そのあたりは、今年の春から秋にかけての選挙が終わると見えてくるかもしれない。

 

 

 

ドイツでは1月末、中道左派政党SPDの党首が不人気なガブリエルから、かなりましなシュミットに代わり、メルケルの右派CDUより世論調査での人気が高くなった。

 

 

現状の人気のままだと、SPDは左派政党3つ(SPD、左翼党、緑の党)を連立することで、今秋の総選挙で、右派のCDUなどを入れずに政権をとれる。

 

左派政権になると、おそらく対米自立と対露和解が進む。

 

独左派政権は、NATOにもっとカネを出せと怒るトランプと喧嘩して、NATOや対米従属から離れていきそうだ。

 

 

 

対米従属・反露なメルケルも、このままでは人気が落ちるので、ロシア敵視を緩和する言動をとっている。

 

 

全欧的にロシア敵視が低下し、米国もトランプと軍産の対立で対露姿勢が定まらない中で、ロシアはやりたいようにやる傾向だ。

 

 

軍産の傀儡であるウクライナの極右政権はトランプ当選以来弱体化している。

 

 

ロシア系の地域であるウクライナ東部は、分離独立に動いており、昨年、学校教育をウクライナ語からロシア語に切り替えた。

 

 

ロシアは、ウクライナ東部の身分証明書でのロシア入国を解禁し、ウクライナ東部をクリミア同様、自国の一部として扱う傾向を強めている。

 

 

ロシアの外相は先日、欧米西アジア勢が一堂に会するミュンヘン安保会議で「『欧米後』の世界秩序を作ろう」と提唱している。

 

 

 

http://tanakanews.com/170221euro.htm

 

 

 

 

 

崩壊に向かうEU 田中宇記事  〕很

  • 2017.02.26 Sunday
  • 09:35

 

 

★崩壊に向かうEU
ーーーーーーーーーー


まず本文執筆前の予定的要約。


EUとユーロの崩壊が不可避な感じになっている。

最大の要因は、5月の仏大統領選挙でルペンが勝った場合、フランスはユーロを離脱してフランに戻りそうなこと。仏国債は、ユーロからフラン建てに変わった時点でデフォルトになり、国債危機が南欧全体に波及する。


フランスがユーロ離脱しなくても、EUの統合を維持する政治コストが上昇しており、ドイツはもう南欧の面倒を見ないので、ギリシャ金融危機が再燃する。EU大統領のユンケルは、統合が崩壊すると予測して再選出馬しないことにした。

 


米連銀の傀儡色が強い欧州中央銀行(ECB)は、ドル救済のためのQE(増刷による債券買い支え)を続けたがっているが、米覇権体制に拘泥する利得を感じられなくなっているドイツはQE反対を強めている。


ユーロの崩壊感とともに、米国を中心とする中銀覇権体制も崩れている。ECBがQEをやめると、欧州の債券危機が米国など世界に広がる。米政府は、ユーロの為替が安すぎると批判したが、独メルケル首相は、ユーロが安すぎることを認めた上で、それはドイツの反対を無視してQEを続けるECBのせいであり、通貨がドイツ単独のマルクだったら為替はもっと高かったと発言。

EU統合を推進してきたメルケルがマルクに言及したことは、ユーロの終わりが近いことを感じさせる。

 


元米連銀議長のグリーンスパンは、ユーロの機能不全を指摘し、国際備蓄通貨としてユーロやドルの地位が下がり、金地金の地位が上がると予測。ドイツ政府は、旧敗戦国として米国などに保管してあった金地金を予定より前倒しして回収している。

 

 

EUはユーロの高額紙幣の廃止など、現金廃止の動きを続けているが、これはユーロ崩壊でEU域内の銀行が連鎖破綻し、人々が銀行預金を引き出して現金でタンス預金しようとすることを阻止する「ベイルイン(銀行破綻のツケを政府でなく預金者など債権者に負わせる)」の始まりを意味する。

 

 

金地金優位のグリスパ発言は絵空事でない。

 

 

 

ドイツは9月の総選挙に向けて、対米従属な中道右派CDUのメルケルよりも、対米自立・親ロシアな中道左派SPDが優勢になっている。

 

人気挽回のため、メルケルも対米自立・対露和解の感じを強め、テロ退治でロシアと協力したいとか、独諜報機関に、ロシアは独選挙に不正介入していないと結論づけさせたりしている(メルケル政権は従来、クリントンばりに、ロシアが独選挙に不正介入しかねないと言っていた)。


だが、ドイツの方向転換は遅すぎた。

 

 

もっと早く対米自立し、EU政治軍事統合の加速をしていたら、英国やトランプが発する昨年来のナショナリズムの嵐でEUが潰されることもなかった。


対米従属に安住する者たちが潰れていく時代になった。    要約ここまで。

 

 

 

http://tanakanews.com/170221euro.htm

 

 

 

 

 

 

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