トランプのやりたいこと  米朝会談   田中宇氏の見解

  • 2018.06.22 Friday
  • 00:33

 

 

▼ 軍産を出し抜いて米朝の敵対構造を破壊したトランプ
 

 

6月12日の米朝会談は、共同声明に北の非核化の具体的な方法が全く盛り込まれず、北が新たな譲歩を明文化する必要が全くなかった半面、

トランプは米韓軍事演習の中止する対北譲歩を発表した。


北が昨秋からすでに行なっている核ミサイル開発の凍結と合わせ、中韓露が求めてきたダブル凍結案に、トランプの米国が乗ったことになる。

 



トランプは「隠れ中韓露支持」(=隠れ多極主義者)である。

これがシンガポール会談の本質の一つだ。

(韓国では先日の統一地方選挙で与党が圧勝し、北と融和する文在寅大統領の立場が強化された。これもトランプの策の結実だ)
 

 


会談の本質のもう一つは、トランプが金正恩との個人的な親密さ・つながりと定期的な連絡体制を構築したことだ。

前回の記事に書いたが、トランプは、金正恩を誘って

「北の経済発展を実現する義兄弟・運命共同体の関係」を作った。


トランプは正恩に、米大統領府の自分の直通電話番号を教え、定期的に2人が電話会談する体制を作った。


1回目の米朝首脳の電話会談が6月17日に行われたはずだ。トランプは正恩を、安倍晋三と同格ぐらいの「仲間」に引っ張りあげた
(日本は、北に対する優位を大幅に失った)。


米国上層部に昔から巣食ってきた軍産複合体は、北朝鮮やロシアとの和解の試み、NATOや在韓・在日米軍の撤収といったトランプの隠れ多極主義戦略を妨害してきた。

トランプは今年2月以来、共和党のヌネス議員(下院諜報委員長)らの協力を得て、自分にかけられたロシアゲートの濡れ衣を破り始めて軍産への反撃に出た。


同時に、ティラーソンやマクマスターといった軍産に近い側近たちを、表向き過激派だが実は隠れ多極主義者でトランプの言うことを良く聞くボルトンやポンペオと差し替えて「軍産外し」を行った。
 

 


加えて今回の米朝会談で、正恩と直接電話できる連絡ルートを作ったことで、トランプは今後、軍産の妨害を受けずに北朝鮮との関係を進めていける。


前回の記事に書いたが、トランプが首脳会談で正恩に提案したことの本質は、会談中に上映され、記者会見で公開された4分間のビデオ作品が象徴している。


「戦争姿勢をやめて北朝鮮を経済発展させよう」という提案だ。


それは、昨年9月の「プーチン提案」と同じ趣旨だ


米朝首脳間に直接の連絡ルートがない場合、首脳会談でいったん信頼関係・義兄弟のちぎりが結ばれても、その後、連絡役の米国の軍産が北を誤解させて怒らせるような微妙な歪曲伝達をやり、いったんできた米朝首脳の関係を破壊する。

だがトランプが正恩との直接の連絡ルートを作ったため、2人の信頼関係は続き、トランプはやりたいようにやり続けられる。



トランプがやりたいことは北の面倒を見る役目を中韓露に任せることだ
 

 

トランプは当初、中国をけしかければそれができると考えたが、すでに書いたように、正恩は中国からの介入をも嫌がり、中国の圧力に対して核ミサイルの開発加速で応えただけだった。
 

 

米国から敵視されている限り、北は中韓露の和解策にも乗ってこない。

北の面倒を見る役目を中韓露に任せるには、その前に米国が北敵視をやめる必要があった。


だが米国は、北を永久に敵視して在韓在日米軍の恒久駐留をめざす軍産が強く、正攻法で北敵視をやめることができない。


オバマはここで北との和解をあきらめた。


だが、オバマを超えて多極化を進めたいトランプは、ここで奇抜な策を考えた。


トランプは、北への敵視を極限まで強め、本物の米朝戦争をやろうとしているように演技した。


軍産は、恒久的な北敵視・日韓への米軍駐留を望んでいるだけで、こぜり合いを超える本物の大戦争などしたくない。

トランプの戦争を止めるため、軍産の方が北敵視の緩和をトランプに求めるようになった。
 



今年3月に金正恩がトランプに首脳会談を提案すると、トランプは、北敵視を緩和したい軍産の求めに応じるとの口実で、こんどは一転して、北と首脳会談して和解しようとする策を突っ走り出した。


首脳会談直前には「会談で(在韓米軍の撤退につながる)朝鮮戦争の終結を宣言するかも」などと言い出した。


CIAの北朝鮮専門家であるブルース・クリングナー(Bruce Klingner)は首脳会談後「合意文書に新味がなくて失望したが、それでも、朝鮮戦争の終結や在韓米軍の撤退が合意文書に盛り込まれるよりは、ずっとマシな結果になった」という趣旨の発言をしている。


トランプが首脳会談の前に

「米朝会談で朝鮮戦争の終結を宣言する文書に署名する可能性が大いにある」という表明を放ったのは、実際にトランプが朝鮮戦争の終結を宣言するつもりだったからでなく、軍産をビビらせて

「代わりに何をしてもいいから、それだけはやめてくれ」「合意文書にCVIDなど厳しい具体策を載せなくていいから、朝鮮戦争の終結も載せるな」と言わせるための交渉材料だった。


同様に、米政府のタカ派の朝鮮専門家であるビクター・チャも

 


「米朝首脳の合意文書は中身がないが、トランプが北と核戦争を起こすことに比べたら、中身のない合意文書の方がはるかにマシだ」と言っている。


トランプは、軍産路線の行きすぎである「米朝核戦争」と、軍産が敵視する覇権放棄・隠れ多極主義的な「在韓米軍撤退」という両極端の間を行ったり来たりして、政敵である軍産をビビらせた末に、

米朝首脳会談を決行し、金正恩と個人的な親密関係を確立した。



トランプは軍産を出し抜いて米朝間の敵対構造を破壊し、米朝和解の政変を成功させた。

トランプは、オバマがやれなかったことを自分がやったと、繰り返し自慢している。この自慢は一理ある。



米議会の軍産系勢力は、トランプの大統領府が北朝鮮との間で決めたことを隠さず全て議会に報告することを義務づける法案を検討している。

これに対抗するため、トランプは、北との間で決めたことを議会や軍産に知られぬよう、できるだけ金正恩との首脳間の口約束にとどめておく隠然策をとっているようだ。


今後も、米国の対北戦略の基本方針が不明確なまま放置される事態が続きそうだ。

曖昧な状態で、世界的な北朝鮮敵視策が解除されていくだろう。


米朝首脳会談は、日本を外交的に窮地に陥れている。

それについては改めて書く。

また、本記事の前に、6月13日に途中まで記事を書いたが、書いているうちに分析が変化し、書き直しの必要を感じてボツにした。

何かの参考になるかもしれないので、途中まで書いた6月13日の記事も以下にリンクしておく。


http://tanakanews.com/180613korea.htm
米朝ダブル凍結を実現したトランプ


http://tanakanews.com/180618korea.htm

 

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